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岡山大学学術研究院医歯薬学域 放射線医学/岡山大学 放射線科

放射線治療 Radiation Therapy

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頭頸部がんに対する強度変調放射線治療

頭頸部とは、上方は脳の下側、下方は鎖骨までの範囲で、この領域に含まれる鼻腔や副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺などにできるがんを「頭頸部がん」と呼びます。頭頸部には呼吸や食事など、人間が生活をおくる上で必要な機能、発声や味覚、聴覚など、社会生活を送る上で重要な機能が集中しています。そのため、がんの発生や治療により障害が起こることで、生活の質が著しく低下してしまいます。また、治療に際しては顔の形態の維持や表情の形成など、整容的な配慮が必要な領域です。そのため頭頸部がんの治療では、臓器の形態と機能温存のために放射線治療が重要視され、利用されることが多くなります。

放射線治療では一般に、がんに対して多くの放射線を照射するほど腫瘍制御率が高くなります。しかし、放射線を多く照射することで周囲の正常組織に大きな副作用が出現してしまいます。頭頸部は、がんの発生部位近くに脳幹や脊髄、眼球や視神経、内耳、唾液腺などの重要な臓器が存在します。そのため、従来の放射線治療では、これらの重要臓器の耐用線量(組織が耐えられる放射線の最大量)をこえて照射を行うことはできませんでした。近年になり、強度変調放射線治療(IMRT)という治療が普及しつつあり、この治療方法を用いることで放射線を当てたい部分(がん)に充分な放射線を当て、当てたくない臓器の放射線量を減らすことが可能(黄色い矢印)となりました。当院では、一部の頭頸部がんに対して強度変調放射線治療(IMRT)を行っています。

従来の放射線治療 強度変調放射線治療 耳下腺強度変調放射線治療

強度変調放射線治療(IMRT)は、腫瘍に線量を集中し、重要な臓器の線量を少なくする治療方法です。そのため、治療時に患者さんの位置がズレたり、頭が動いてしまうことで、重要な臓器に放射線が多く当たってしまう可能性があります。頭頸部がんに対する放射線治療では、従来の放射線治療法でも写真のようなシェルと呼ばれる頭の固定具を使用し、患者さんをしっかりと固定して治療を行います。従来の治療方法よりも高い精度で照射を行う強度変調放射線治療(IMRT)では、シェルの使用に加え、上あご(あるいは下あご)に装着し、位置のズレや頭の回転などを防止するマウスピースを併用して行います。
当院では頭頸部がんセンター歯科部門(歯科医師、歯科技工士)と連携し、患者さん個々人のお口の状態に合ったマウスピースを作製しています。

シェル マウスピース 頭頸部がんセンター歯科部門(歯科医師、歯科技工士)と連携

頭頸部がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)は、従来の放射線治療では避けることが難しかった唾液腺(耳下腺)の線量を減らすことで、治療後の唾液量の減少を抑え、口の乾燥を軽減できます。しかしながら、唾液量の減少や、従来の放射線治療でも生じる口の中やのどの粘膜の副作用(痛みを伴う炎症)を完全に抑えることはできません。治療中あるいは治療後に生じるこれらの副作用に対しては、口腔ケア(口の中の清掃)が痛みの軽減や唾液量の減少に伴う歯周炎の悪化やむし歯の発生を予防するために有効です。当院では放射線治療前から頭頸部がんセンターの歯科医師、歯科衛生士による専門的口腔ケア・指導を行い、副作用の軽減に勤めています。

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