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岡山大学学術研究院医歯薬学域 放射線医学/岡山大学 放射線科

放射線治療 Radiation Therapy

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前立腺がんに対する強度変調放射線治療

当院では、前立腺がんへの外部放射線治療に、強度変調放射線治療と画像誘導下放射線治療を併用して高精度放射線治療を行なっております。

前立腺がんに対する放射線治療の成績は手術による切除とほぼ同等とされ、また何らかの理由で手術はリスクが高い患者さんにも比較的安全に治療することができます。従来の放射線治療(三次元原体照射)での限界として、治療して数カ月後に直腸潰瘍・出血で患者さまにご迷惑をおかけすることがありました。

その副作用を減らすため、強度変調放射線治療(IMRT)という治療が普及しました。この治療は、放射線をあてたくない臓器の放射線量を減らすことができ、その結果、放射線治療に伴う副作用が発生しにくくなります。前立腺がんにおいて有用性が認められ、治療後の直腸の副作用が減少します。前立腺がんの患者さんは、ご高齢の方も多くがん以外の病気もお持ちの方が殆どで、比較的負担の少ない放射線治療でも慎重に行う必要がある場合に、このIMRTはお役に立てると思っています。

下は線量分布で、左が従来の放射線治療、右がIMRTとなります。どの臓器にどれだけ放射線があたっているかを表しています。黄色い矢印は直腸を示していますが、IMRTでは、直腸に従来の放射線治療より線量が少なくなっています(赤い矢印)。

従来の放射線治療"
IMRT

患者さんには放射線科医師からお話しさせていただき、3日に分けて3回CT撮影を行います。適切なCTを選択して、コンピューター上でシミュレーションを繰り返して、あてたい前立腺の線量とあてたくない直腸へのバランスの良いところを探していきます。計画後は、検証を行い、準備開始から2~3週間後より開始致します。1日1回、平日に最大週5回、合計39回で治療します。骨盤部に照射して放射線の影響で頭の髪の毛が抜けることはありませんし、IMRTを受けておられる患者さまに近寄っても放射線をあびることはございません。この治療自体による入院は不要で、外来通院で仕事をしながらなど日常生活を維持したままがん治療を行うことができるのもこの治療の良い所です。

また、前立腺の位置は主に直腸のサイズの影響で日々異なることがわかっています(下図)。

前立腺の位置は毎日異なる

従来の放射線治療では前立腺が日々移動しても、放射線治療を照射する部位は計画時と同じになります(下図)。少し極端な図ではありますが、計画時にはきちんと前立腺に照射されることになっていても、前立腺が移動してしまうと病気のある前立腺に照射しているのか、病気のない直腸に照射しているのかわかりません(赤い線が照射範囲)。IMRTの有効性も損なわれる可能性があります。

計画時 日々の治療時

このような問題を解決する手段として当院ではCT一体型リニアックを用いて画像ガイド下放射線治療(IGRT)を行っております。毎日治療直前にCTを撮影して、計画時との誤差を計算してその分を補正して照射します(下図)。これにより、前立腺がどこに移動しても前立腺に正確に放射線治療をすることができ、直腸の副作用を減らせ、さらに、予定通りの治療効果を得ることができます。

移動しても前立腺を追跡して照射する

また、膀胱のサイズによっても直腸ほどではありませんが前立腺の位置は変動します。従来の放射線治療ではこのような前立腺の移動を少しでも少なくするため、排尿後に放射線治療を行います。前立腺の動きが減ってその点ではよいのですが、膀胱は小さくなっていますので、膀胱にあたる放射線は多くなります(下図左)。当院では飲水の上、30分から1時間程度、畜尿して頂いて照射します。膀胱に照射される範囲が小さくなり(下図右)、そのぶん、膀胱の副作用を減らすことができます。当院ではこれらIMRTとIGRTを併用して、直腸や膀胱の副作用の少ない放射線治療を行なっております。

なお、術後PSA再発に対しても、同様にIMRTとIGRTを併用して治療を行っております。1日1回、平日に最大週5回、合計33回で治療します。

排尿時 畜尿時
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