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岡山大学学術研究院医歯薬学域 放射線医学/岡山大学 放射線科

IVR Interventional Radiology

ホーム 診療について IVR ラジオ波による肝、肺、腎、骨軟部腫瘍の治療
2022年9月より肺がん、小径腎がん、骨軟部腫瘍、類骨骨腫にラジオ波治療が保険適用になりました 2022年9月より肺がん、小径腎がん、骨軟部腫瘍、類骨骨腫にラジオ波治療が保険適用になりました

ラジオ波による肝、肺、腎、骨軟部腫瘍の治療

ラジオ波治療は、近年、肝がん、腎がん、肺がん、骨軟部腫瘍など多種多様の腫瘍の治療に広く用いられています。この治療は、CTや超音波などの画像を見ながら、腫瘍に鉛筆の芯くらいの太さの針を刺入し、ラジオ波電流で腫瘍を加熱して死滅させるものです。特に肝がんにおいては既に広く行われており、手術と遜色のない成績が報告されています。また、治療は針を刺して行いますので、開腹や開胸を伴う手術と比べて、患者さんの体への負担が少なく、手術が困難な患者様にも施行出来ることも大きな利点の1つです。治療は繰り返し行うことができ、もし再発した場合にも再治療が可能です。抗がん剤や放射線治療など他の治療と組み合わせて治療を行う場合もあります。

写真の解説:最先端の技術が搭載されたIVR-CTを駆使し、モニター上に映し出されるCT画像を見ながら腫瘍に対して正確にラジオ波治療用の針を穿刺することができます。

当科では、この治療の有用性に注目し、肝がん以外に、2001年より肺がん、腎がん、骨軟部腫瘍に対して、病院内の倫理委員会の承認を得た上で、呼吸器外科、泌尿器科、整形外科、麻酔科などと協力しながらラジオ波治療を行ってきました。以前は肝がんのみが健康保険で認められていましたが、2022年9月より肺がん、小径腎がん、骨軟部腫瘍、類骨骨腫にも保険診療が認められています。

肺がんに対するラジオ波治療

2001年6月に第1症例目を経験し、2022年8月までに原発性肺がんや大腸がん、肝細胞がん、腎がん、肉腫などからの転移性肺がんを含め、約670名の患者様で、のべ約1800個の肺腫瘍に対してラジオ波治療を施行しました。その成績は世界的な学術誌に論文として多数掲載されています。2022年9月より肺悪性腫瘍に対するラジオ波治療の保険診療が認められています。

治療内容

患者様にはまずCT台の上に仰向けもしくはうつぶせで寝ていただきます。IVR-CT装置を駆使し、CT画像を観察しながら電極針を病変に刺入します。その後、腫瘍を加熱して死滅させます。治療時間は、病変の数や大きさにより様々ですが、2~3時間程度で終わることが多いです。

治療中の痛み

治療は、適切な鎮痛薬を使用して行い、痛みは軽度であることが多いです。麻酔は通常、局所麻酔を使用しますが、強い痛みが予想される場合や患者様が希望された場合は、硬膜外麻酔や全身麻酔を使用することもあります。

費用

2022年9月より肺悪性腫瘍に対するラジオ波治療が保険収載されたため、保険診療として受けていただくことができます。

治療後の経過

治療後は発熱などの症状や、気胸などの合併症が生じることがありますが、順調であれば治療後3~4日で退院可能です。退院後は、定期的にCTや採血にてフォローアップを行います。必要に応じてPET検査や呼吸機能検査も行います。

治療成績

2cm未満の腫瘍では完全に治療出来る確率は80%を超えますが、治療成績は腫瘍の大きさや部位により影響を受け、2cm以上の腫瘍では再発のリスクが高くなります。

治療の限界

以下のように、ラジオ波治療で満足な結果が得られない場合があります。

  1. 治療成績で述べたように、腫瘍が大きい場合は、完全に腫瘍が制御できないことがあります。
  2. 腫瘍が太い血管や心臓に近かったり接している場合は、これらを損傷し命に関わる合併症が生じる場合や、血流で腫瘍が冷やされて十分温度を上げることができず完全な腫瘍制御が得られない場合があります。
  3. ラジオ波治療はあくまで治療した場所にしか効果がありません、このため肺以外の場所にも病変があったり、両側の肺にたくさんの病変があり完全にすべての病変を治療できない場合はラジオ波治療の適用から外れてしまうことがあります。

症例1

右原発性肺がんの症例ですが、ラジオ波治療を行うと、約半年後には腫瘍は死滅し瘢痕状となっています。

治療前

治療前

治療中

治療中

治療後

治療後

症例2

治療前のPETで黒くみられる両肺に多発する転移性肺がんの多くは、計3回のラジオ波治療後のPETで消失しています。このようにラジオ波治療は繰り返して行うことができ、多発する病変の治療も可能です。

治療前

治療前

治療後

治療後

腎がんに対するラジオ波治療

腎がんにおいても、我々は泌尿器科と協力し、2002年5月1日に日本で第1例目となるラジオ波治療を施行しました。2012年3月までに80名以上の患者様に治療を行っています。繰り返し治療を行うことも可能で、単腎(腎臓が1つしかない)の患者様やフォンヒッペルリンドウ(VHL)病など腎がんが多発する患者様にも有用な治療法です。2022年9月より小径腎悪性腫瘍に対するラジオ波治療の保険診療が認められています。

治療内容

患者様にはまずCT台の上に仰向けもしくはうつぶせで寝ていただきます。IVR-CT装置を駆使し、CT画像を観察しながら電極針を病変に刺入します。その後、腫瘍の焼灼を行います。治療時間は、治療する病変数や大きさにより様々ではありますが、2~3時間程度で終わることが多いです。
なお、ラジオ波治療の効果を高めるために、前もって動脈塞栓術(腫瘍を影響する血管を詰める処置)を行う場合があります。

治療中の痛み

治療は、適切な鎮痛薬を使用して行い、痛みは軽度であることが多いです。麻酔は通常、局所麻酔を使用しますが、強い疼痛が予想される場合や患者様が希望した場合は、硬膜外麻酔や全身麻酔を使用することもあります。

費用

2022年9月より腎がんに対するラジオ波治療が保険収載されたため、保険診療として受けていただくことができます。

治療後の経過

治療後は発熱などの症状や、血尿などの合併症が生じることがありますが、順調であれば3~4日で退院が可能です。退院後は、定期的にCT、MRIや採血にてフォローアップを行います。

治療成績

治療成績は良好で、95%を超える腫瘍が1~2回の治療で完全に制御されています。多くの場合、腎機能への影響も軽度です。

症例

腎がんが多発するフォンヒッペルリンドウ病の患者様で、左腎はすでに他院で摘出されており、右腎しかない単腎のケースです。ラジオ波治療後に腫瘍は完全に死滅しています。この患者様はこの後、もう一つ別にあった腎がんに対しても同様に治療を受けられました。ラジオ波治療は腎機能への影響が少なく、繰り返して治療できることから、このような単腎の多発腎がんでも治療が可能です。

類骨骨腫に対するラジオ波治療

類骨骨腫は良性の骨腫瘍ですが、強い痛みを伴い、従来は手術で切除されていました。しかし、ラジオ波治療の有効性が報告されるようになり、我々は整形外科との協力のもと、積極的にラジオ波治療を行っています。2022年8月までに、68名の患者様に治療を行っています。2022年9月より類骨骨腫に対するラジオ波治療の保険診療が認められています。

治療内容

患者様にはまずCT台の上に仰向けもしくはうつぶせで寝ていただきます。IVR-CT装置を駆使し、CT画像を観察しながらまずドリルで骨に穴を開けます。次に穴の中に電極針を進め、病変に刺入します。その後、腫瘍の焼灼を行います。治療時間は、治療する大きさにより様々ではありますが、2-3時間程度で終わることが多いです。

治療中の痛み

原則的に全身麻酔を用いて治療しますので、治療中に痛みを感じることはありません。

費用

2022年9月より類骨骨腫に対するラジオ波治療が保険収載されたため、保険診療として受けていただくことができます。

治療後の経過

治療後は、治療の影響による発熱や痛みなどの症状が生じることがありますが、順調であれば治療後2~3日で退院可能です。退院後は、外来で治療効果の評価を行います。

治療成績

治療成績は良好で、多くの患者様で痛みが消失あるいは著明に改善します。

症例

右大腿骨に見られた類骨骨腫は、治療後には完全に死滅しています。治療前には強い痛みがありましたが、治療直後より完全に消失しました。

治療前

治療前

治療後

治療後

骨軟部腫瘍に対するCTガイド下ラジオ波治療

ラジオ波治療は、がんの骨転移による痛みを軽減させる治療として有効であったとの報告があり、痛みに対する標準治療(薬物治療や放射線治療)ができないもしくは無効である患者様に有用な可能性があります。2022年9月より骨軟部腫瘍に対するラジオ波治療の保険診療が認められています。

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